新型コロナウィルス感染症が世界的規模で蔓延する中、戦力拡大を続ける中国への本格的な対処の必要性に着目して、我が国においては、「抑止」に焦点を当て、その実効性を担保するための国家戦略の見直しが不可欠です。
こうした現状認識に立ち、F3プロジェクトとしては、今年度の研究テーマを我が国の安全保障戦略のあるべき姿の再考察に当てることにしました。
令和3年度上半期は、『「包括的抑止戦略」構築のための課題と取組み』を、また下半期は『国家安全保障戦略のあり方』をサブテーマにして、毎月の勉強会において掘り下げていきます。
令和3年度の焦点、月別の細部計画と結果の要約
令和3年度プロジェクト活動の焦点
令和3年度の活動計画
開催数 | 主な研究テーマ | 開催月日 | 参加者 |
第1回 | 「国際安全保障環境の基本構造と潮流の認識と評価」 | 4月17日 | 10名 |
第2回 | 「ネットアセスメントについて(概要、あり方等)」 | 5月23日 | 12名 |
第3回 | 「包括的抑止戦略に基づく我が国の防衛のあり方」 | 6月13日 | 12名 |
第4回 | 「包括的抑止戦略に基づく日米共同のあり方」 | 7月23日 | 11名 |
第5回 | 「包括的抑止戦略に基づく防衛力整備のあり方」 | 8月21日 | 11名 |
第6回 | 「今後の課題と取り組みの在り方(まとめ)」 | 10月10日 | 10名 |
第7回 |
「国家安全保障戦略の現状と課題」 |
10月30日 | 9名 |
第8回 | 「国家安全保障戦略上の中国の評価」 | 11月27日 | 11名 |
第9回 | 「国家安全保障戦略上の課題(見直すべき政策等)」 | 12月18日 | 11名 |
第10回 | 「国内における安全保障上の課題について(防衛産業、技術基盤等)」 | 1月30日 | 12名 |
第11回 | 「国家安全保障戦略上の課題(新領域及び環境問題への取り組み方等)」 | 2月23日 | 13名 |
第12回 | 「今後の課題と取り組みについて(まとめ)」 | 3月27日 | 8名 |
第1回研究テーマ(4月):「国際安全保障環境の基本構造と潮流の認識と評価」
R03年度上半期の研究テーマである「『包括的抑止戦略』構築の為の課題と取り組みについて」を考えるにあたって、その前提となる国際安全保障環境の基本構造と現在の潮流(変化)を如何に認識するかについて議論する。
2.参考資料等
①前田祐司「2030年米中二極構造と日本の安全保障」NIDSブリーフィング・メモ2019年10月号
②平和・安全保障研究所(RIPS)「政策提言 新たな安全保障戦略―高まる脅威と不透明な国際環境に立ち向かう」2018年7月23日1-14頁
③宮本雄二「『新しい冷戦』のコアの論点 技術覇権と技術管理」『米中技術覇権競争と日本』日本経済研究センター、2020年2月、15-40頁
④佐橋亮「米国の対中国政策 関与・支援から競争・分離へ」、同上、41-67頁
⑤石原雄介「大国間競争に直面する世界」『戦略概観2021』防衛研究所、2021年3月、1-9頁
第1回(4月)勉強会における主な意見等
1 勉強会の焦点
年間計画に基づき、米中を中心とした国際安全保障環境の基本構造と現在の潮流(変化)を、参考資料を基に確認した上で意見交換を行い、認識を深め合う。
2 意見交換に先立つ参考資料の要点説明
国際安全保障環境が大きく変化する現在をどのように認識し、今後我が国が安全保障戦略を如何に打ち出していくべきかを念頭に、以下の5つの資料のポイントを約45分で説明。なお、それぞれの特徴は以下のとおり。
(1)前田祐司「2030年米中二極構造と日本の安全保障」NIDSブリーフィング・メモ 2019年10月号
→ 米中の将来動向についてシナリオ・プランニング手法を用いて分析。
(2)平和・安全保障研究所(RIPS)「政策提言 新たな安全保障戦略―高まる脅威と不透明な国際環境に立ち向かう」2018年7月23日1-14頁
→ 主に科学技術に焦点を当てて、米中関係を評価、論じた内容。
(3)宮本雄二「『新しい冷戦』のコアの論点 技術覇権と技術管理」『米中技術覇権競争と日本』日本経済研究センター、2020年2月、15-40頁
→ 米中の技術覇争いについて歴史的観点から分析。
(4)佐橋亮「米国の対中国政策 関与・支援から競争・分離へ」、同上、41-67頁
→米中関係のみならず、多元的・多極的視点も重視。
(5)石原雄介「大国間競争に直面する世界」『戦略概観2021』防衛研究所、2021年3月、1-9頁
→ 我が国の政策に対する提言を中心とした内容。
3 主な意見交換(約1時間)
〇一昨年から米中対立の捉え方のトーンが変化。米ソ冷戦との違いを重く受け止めるべき。米中対立の課題と日中韓の課題にもズレがある。このズレをどう評価するかの整理が必要。〇米国が、単独か同盟国の連帯か、中国については、孤立か協調かの戦いのいずれかの戦略オプションを選択しても、我が国としては巻き込まれるか、見捨てられるかの立場になるため、しっかりとポジショニングを確保することが肝要。
〇日米でも利害がズレることがある。中国に対しては上手く振る舞うべき。恐れるシナリオは台湾有事。何が中国をそうさせるのか。不必要に中国を追い込む必要はないのではないかと思料する。
〇シナリオ・プランニングにも関係するが、中国との関係を上手くやるには、冷戦期と構造が違う考え方が必要。日米同盟も100%信頼できる時代ではなくなった。抱き込む、巻き込むシナリオを明確にすべき。
〇インド太平洋という多元的な広い視点でみるべき。米中の両大国に焦点を当てがちだが、露、印、中東情勢を踏まえた戦略見直しが必要。
〇国家は、その時の状況にのみ対応するのではなく、一貫した安全保障戦略のもとに、一貫した実践的な行動をとるべき。中国に楔を打たれることの無きよう、譲れないものとの関係性の整理する時期に来ている。
〇科学技術の観点からは、中国の科学技術の進歩は現実的に脅威になっている。このことを認識している米国は、国力の優位性を確保するために技術だけではなく、迅速に運用することで多様性を確保しようとしている。
〇従来の考え方では後手に回ってしまうという危機感も感じている。我が国が基本的にどの方向に進むべきかの明確な軸(国家像)を決めていく時期に来ている。
〇軸をしっかり持つということと、パワーバランスを謀ることは、極めて重要。我が国が安全保障上の自立をどこまで追求するのか、米国との同盟依存をいつまで進化させるのかといった軸(国家像)をより鮮明化すべき。
4 次回の予定
我が国の安全保障戦略を確固たるものにするための極めて重要な評価方法となる「ネットアセスメント」について参考資料を基に意見交換する予定。我が国では、これまであまり検討されていなかった分野でもある。自分の強みを活かして相手を抑え込む一つのツールとも言えるため、その概念及び手法の概要を学ぶ。
第2回研究テーマ(5月):「ネットアセスメントについて(概要、あり方等)
1.研究テーマ
R03年度上半期の研究テーマである「『包括的抑止戦略』構築の為の課題と取り組みについて」を考えるにあたって、今月はネットアセスメントの概要及びそのあり方等について議論する。
2.参考資料等
①「第4章 ネットアセスメントの誕生」、アンドリュー・クレピネヴィッチ、バリー・ワッツ『帝国の参謀-アンドリュー・マーシャルと米国の軍事戦略』日経BP社、2016年4月19日、p141-176
②カーネギー財団「2030年における中国軍と日米同盟:戦略的ネットアセスメント」(PPT資料)、2013年5月23日
③「ネットアセスメント関連記事等」
・「電磁波領域における戦い – 米国ネットアセスメントによる評価・分析」海自幹部 学校(コラム155 2020/03/16)
・宮家邦彦、「『ネットアセスメント』に注目せよ」産経新聞(2015年6月11日)
・笹川平和財団安全保障研究グループ「ネットアセスメント導入」2018年度事業(小原凡司)
・藤和彦、「中国「主動的な戦争設計への転換」宣言-日本、有事に備え「ネットアセスメント」強化が急務」、独立行政法人経済産業研究所(RIETI)
・岩崎茂、「イージス・アショアの導入中止にあたって考えるアセスメント手法の活用」、2020年7月28日
・東京財団「2030年の中国の軍事力と日米同盟-米シンクタンクの戦略的分析と評価」2013.5.23
第2回(5月)勉強会における主な意見等
1 勉強会の焦点
上半期の研究テーマである「『包括的抑止戦略』構築の為の課題と取り組みについて」を考えるにあたっては、今回は米国において活用されているネットアセスメント手法について関連資料を基に理解を深めた上で、我が国のネットアセスメント動向等を議論する。
2 意見交換に先立つ参考資料の要点説明
以下の資料のポイントを約45分で説明。なお、それぞれの特徴は次の通り。
(1)「ネットアセスメント関連記事等」
ア 電磁波領域における戦い – 米国ネットアセスメントによる評価・分析」海自幹部学校(コラム155 2020/03/16)
→ CSBAレポートに関する記事で、ネットアセスメントの目的、競争相手依の強みと弱みを評価して戦略計画を立てる手法等が理解できる内容。
イ 宮家邦彦、「『ネットアセスメント』に注目せよ」産経新聞(2015年6月11日)
→ 日本として戦略を立てるにあたっては、ネットアセスメントが必要であると言及。
ウ 笹川平和財団安全保障研究グループ「ネットアセスメント導入」2018年度事業(小原凡司)
→ 2021年度が当該事業の最終年度であるため、シンクタンクによる結果が待たれるところ。
エ 藤和彦、「中国「主動的な戦争設計への転換」宣言-日本、有事に備え「ネットアセスメント」強化が急務」、独立行政法人経済産業研究所(RIETI)
→ 米中対立について、主に経済的視点からどのように評価すべきかに関する内容。
オ 岩崎茂、「イージス・アショアの導入中止にあたって考えるアセスメント手法の活用」、2020年7月28日
→ ネットアセスメントという、総合的な評価により、限られた予算で効率的な防衛戦略の見直しが必要と主張。
カ 東京財団「2030年の中国の軍事力と日米同盟-米シンクタンクの戦略的分析と評価」2013.5.23
→ 討議主体の内容であり、(3)に示すカーネギー国際平和財団が出した資料を基に、中国に対する戦略的ネットアセスメントを説明。
(2)「第4章 ネットアセスメントの誕生」、アンドリュー・クレピネヴィッチ、バリー・ワッツ『帝国の参謀-アンドリュー・マーシャルと米国の軍事戦略』日経BP社、2016年4月19日、p141-176
→ アンドリュー・マーシャルの伝記ではあるものの、ネットアセスメントの必要性、その分析方法等を知る上で重要な内容。
(3)カーネギー財団「2030年における中国軍と日米同盟:戦略的ネットアセスメント」(PPT資料)、2013年5月23日
→ 米国としてではなく、シンクタンクとしてシナリオ・プランニング手法を用い、分析している。
3 主な意見交換
〇 空自も当然ながらネットアセスメントには興味を持っている。米国にあっては、マーシャルの伝記に記載されていたとおり、軍種の利害に捉われず、また誰の忖度も無く国防長官にのみに対して診断結果を報告する等、学ぶべきことが多々ある。
〇米国の関連予算は年間数億ドルと言われている。それぞれの分野の専門家を招聘し情報収集し、時に国家の意思決定者に対して、厳しい結果を提示する必要もある。
〇 ネットアセスメントについては、戦略策定において一丁目一番地という認識。空自の中での体制は、シンクタンクとしての独立性を考えると、は研研究センターが実施するのが良いのではないだろうか。
〇不確実性の時代において長期的な戦略見積りは難しい。見積り業務に従事する要員の配置期間が2年程度では分析は困難である。米国のように、真の専門家を配置することが必要であろう。
〇ネットアセスメントは、評価結果を出して終わりではなく、レビューをして見直していくことが大事である。我が国の場合、策定した戦略等の成果物を必要に応じて見直すとしているが、現実には難しいところがあるようだ。
〇 ネットアセスメントにおいて、診断という行為が重要であることを理解できた。その診断を行うにあたっては、リニアな見方による弊害については、変えていかねばならない。
〇診断上の大切な点は2つある。一つは、自衛隊の任務遂行能力を、如何なる見方でどのように評価するのかである。2つ目として、第三者的立場で専門的な知識を持った者による分析・評価の積み上げが必要である。今までは全て現役で解決しようとしていたが、不足の感があるならばOBやシンクタンクを使う時代に来ている。
〇分析に必要な膨大なデータの必要性は重要である。この場合、AI が有効に機能するものと思料するが、そのためのデータ・サイエンティストの確保・養成も必須。データから何を求めるかの空自のニーズ、それを現実に構築する為のデータ・エンジニアリング、分析スキルとしてのデータ・サイエンティストの連携が鍵。
〇ネットアセスメントのアウトプットについては、殆ど見ることができず、疑問が残る傾向が強い。つまり、受け手の取り方によってアウトプットのあり方は変わるということである。この点に関しては、ラストウォーリアにおけるソ連に対する分析を統計から考えたとの下りが大いに参考となる。
〇ラストウォーリアがマーシャルの自伝とは言いながら、示唆に富む多くのポイントが記載されていると思う。これを踏まえて空自向けのコメントが3つ。1点目は、長期的な戦力見積り等については空幕長が問を出し、これに研究センターが回答する。2点目として、ネットアセスメントに特化した人材育成・確保が大切。3つ目は、人材のまとめ役。この点では、OB の活用もあるだろう。
第3回(6月)研究テーマ:「包括的抑止戦略に基づく我が国の防衛のあり方」
1.研究テーマ
R03年度上半期の研究テーマである「『包括的抑止戦略』構築の為の課題と取り組みについて」を考えるにあたって、今月は、包括的抑止戦略に基づく我が国の防衛のあり方、特に防衛政策等の見直しの方向性について議論する。
2.参考資料等
①「専守防衛」、「基盤的防衛力」等に関連する諸資料
②「イージスアショア配備中止時の議論」等に関連する資料
③千々和泰明、「序章:戦後日本の防衛構想をめぐる疑問」、p001-021、『安全保障と防衛力の戦後史1971~2010-「基盤的防衛力構想」の時代―』、2021年5月25日、千倉書房
④千々和泰明、「第5章:フェードアウト(9.11後)」、p221-252、『安全保障と防衛力の戦後史1971~2010-「基盤的防衛力構想」の時代―』、2021年5月25日、千倉書房
⑤千々和泰明、「終章:基盤的防衛力構想という「意図せざる合意」」p253-272、『安全保障と防衛力の戦後史1971~2010-「基盤的防衛力構想」の時代―』、2021年5月25日、千倉書房
⑥平田英俊、山下愛仁「包括的抑止戦略の必要性と防衛力整備の在り方について」『エア・アンド・スペース・パワー研究』(第7号)、75-93頁
第3回(6月)勉強会における主な意見等
1.勉強会の焦点
R03年度上半期の研究テーマである「『包括的抑止戦略』構築の為の課題と取り組みについて」を考えるにあたって、包括的抑止戦略を遂行していく上で、これまでの我が国の防衛政策にかかる構想及び考え方が如何に形成され、継承されてきたかについて認識を深め、防衛政策等の見直しの方向性について議論する。
2.意見交換に先立つ参考資料の要点説明
①「専守防衛」、「基盤的防衛力」等に関連する諸資料
→ これら資料は、専守防衛と基盤的防衛力が如何なる意味合いを持つのかをまとめたもの。今後は、専守防衛の許容範囲はどこまでか、どのように変化するのか等が論点。
②「イージスアショア配備中止時の議論」等に関連する資料
→ 様々な見方とコメントが多数の有識者が述べている内容を整理したもの。
③千々和泰明、「序章:戦後日本の防衛構想をめぐる疑問」、p001-021、『安全保障と防衛力の戦後史1971~2010-「基盤的防衛力構想」の時代―』、2021年5月25日、千倉書房
→ 基盤的防衛力構想がどのように形成され、終焉していったかについて分かりやすく記述されており、安全保障の力学を考えるうえで役立つ資料。
④千々和泰明、「第5章:フェードアウト(9.11後)」、p221-252、『安全保障と防衛力の戦後史1971~2010-「基盤的防衛力構想」の時代―』、2021年5月25日、千倉書房
→ これまでの各大綱における基盤的防衛力構想の移り変わり等を論述。
⑤千々和泰明、「終章:基盤的防衛力構想という「意図せざる合意」」p253-272、『安全保障と防衛力の戦後史1971~2010-「基盤的防衛力構想」の時代―』、2021年5月25日、千倉書房
→ 基盤的防衛力構想の形成から終焉までの経緯、戦後に我が国の安全保障政策史における意味と今後の安全保障政策への示唆が記述。
⑥平田英俊、山下愛仁「包括的抑止戦略の必要性と防衛力整備の在り方について」『エア・アンド・スペース・パワー研究』(第7号)、75-93頁
→ 包括的抑止戦略について、抑止を念頭においた今後の我が国防衛政策が分かりやすく記述されている。
3 主な意見交換
〇包括的抑止といった時の包括については、脅威の累計を包括的に考えることであり、影響度の脅威から核攻撃までフルスペクトルで取り得る抑止を示している。手段の包括性と捉えている。その手段の包括性にあっては軍事力が重要な位置づけとなる。
〇我が国は、中国を念頭に安全保障上の抑止を効かせるやり方について、冷戦期のNATO が行った抑止の議論を参考すべきである。
〇我が国において防衛力もそこそこ備わってきた今日、脅威対抗型として本格的に敵基地攻撃能力を具備すべき時代になってきた。本気の議論と理解が必要である。
〇米国における 包括的抑止戦力が議論があった。米国防長官のオースティンがインテグレーテッド・デタランスについてワシントンポストにおいて、国力の全てを抑止に充てると述べている。したがって、抑止については米国との連携協議が重要。
〇 戦略を形成する切り口として、必要最小限の防衛力、専守防衛といった方法論が先に来るが、End Stateを具体的に定めることが大切。そのエンドステートを目指したアプローチを実行する具体的な抑止施策や資源は何なのかを打ち出していくべきである。
〇 手段の包括性が今後大事になってくる。レベルでいうと防衛省を超えている。国家安全保障としこれを明示していかねばならない。そういう考え方に基づいて経済、技術、防衛を連動されることで戦略的にアプローチができる。防衛省の範疇だけに留まらないあらゆる省庁等と議論する時代になってきた。
〇インド太平洋地域における地域における防衛戦略をどうするか、ヨーロッパの冷戦期の抑止に学ぶところが大きい。日本は米中のパワーの主要アクターではない。だからこそ、欧州の冷戦構造を学ぶ必要がある。
〇包括的な手段の必要性に関してはかなり認識はされている。諸計画ではFDO も組み込まれているようだし、かなり実施されてもいる。共同訓練の実施は昔では考えられない規模である。
〇BMD は脅威対抗型の作戦ではあるが、抑止という観点で議論されていない感がある。包括的な抑止の観点では、BMDを抑止の手段と考えれば、策源地攻撃だけでなく、攻撃力を持つことは必要である。
第4回研究テーマ(7月):「包括的抑止戦略に基づく日米共同のあり方」
1 研究テーマ
R03年度上半期の研究テーマである「『包括的抑止戦略』構築の為の課題と取り組みについて」を考えるにあたって、包括的抑止戦略に基づく日米共同のあり方にかかる見直すべき政策、その方向性等について、日米の任務・役割分担の考え方及び共同作戦計画、相互運用性をキーワードにしながら、意見交換する。
2 参考資料等
①千々和泰明、「日米同盟をめぐる「対等性」と「実効性」-安保改定60年」NIDSコメンタリー第123号、2020年6月16日
②ジェームズ・L・ショフ/高橋杉雄、「日米同盟の抑止力強化」アジア戦略イニシアティブ(ASI) ポリシー・メモランダム(#1)、2018 年 1 月 笹川平和財団日米プログラム
③徳地秀士、「「日米防衛協力のための指針」からみた同盟関係-「指針」の役割の変化を中心として」、国際安全保障第44巻第1号、2016年6月、10-29頁
④猿田佐世、「第4次アーミテージ・ナイ報告分析 さらなる日米一体化への要求」、新外交イニシアティブ、2019年5月14日
⑤Richard L. Armitage, Joseph S. Nye, “Alliance in 2020 AN EQUAL ALLIANCE WITH GLOBAL AGENDA”, CSIS, Dec.2020
⑥第5次アーミテージナイ報告関連資料
⑦森本敏、「第6章 同盟マネジメントと安全保障」101-129頁、「提言 より強固な日米同盟を目指して」223-248頁、『提言 日米同盟を組み直す』田中明彦、日本経済新聞出版社、2017年9月22日
⑧平田英俊、山下愛仁「包括的抑止戦略の必要性と防衛力整備の在り方について」『エア・アンド・スペース・パワー研究』(第7号)、75-93頁
第4回(7月)勉強会における主な意見等
1 勉強会の焦点
R03年度上半期の研究テーマである「『包括的抑止戦略』構築の為の課題と取り組みについて」を考えるにあたって、包括的抑止戦略に基づく日米共同のあり方にかかる見直すべき政策、その方向性等について、日米の任務・役割分担の考え方及び共同作戦計画、相互運用性をキーワードにしながら、意見交換する。
2 参考資料等
①千々和泰明、「日米同盟をめぐる「対等性」と「実効性」-安保改定60年」NIDSコメンタリー第123号、2020年6月16日
→ 同盟管理は容易でなく、これをどうすべきかについて言及。従来は米側の要求に応じる受動姿勢であったが、今後は対等性と実効性確保が重要と主張。
②ジェームズ・L・ショフ/高橋杉雄、「日米同盟の抑止力強化」アジア戦略イニシアティブ(ASI) ポリシー・メモランダム(#1)、2018 年 1 月 笹川平和財団日米プログラム
→ 提言では、抑止力強化を一貫して強調し、米国の対中国政策を見直すべきを主張。
③徳地秀士、「「日米防衛協力のための指針」からみた同盟関係-「指針」の役割の変化を中心として」、国際安全保障第44巻第1号、2016年6月、10-29頁
→ ガイドラインが日本の防衛力整備に影響を与えたのではないかという点を説明する論文という位置づけ。
④猿田佐世、「第4次アーミテージ・ナイ報告分析 さらなる日米一体化への要求」、新外交イニシアティブ、2019年5月14日
→ 日本のリベラル・シンクタンクがアーミテージ・ナイレポートを分析したといった内容。
⑤Richard L. Armitage, Joseph S. Nye, “Alliance in 2020 AN EQUAL ALLIANCE WITH GLOBAL AGENDA”, CSIS, Dec.2020
⑥第5次アーミテージナイ報告関連資料
→ FIIP(Free and Open Indo-Pacific)構想を掲げ、中国の野心に対抗するための戦略的枠組み構築について、日本のリーダーシップを評価。
⑦森本敏、「第6章 同盟マネジメントと安全保障」101-129頁、「提言 より強固な日米同盟を目指して」223-248頁、『提言 日米同盟を組み直す』田中明彦、日本経済新聞出版社、2017年9月22日
→ アーミテージ・ナイレポートの日本版を目指した内容で、記述内容は広範にわたる。
⑧平田英俊、山下愛仁「包括的抑止戦略の必要性と防衛力整備の在り方について」『エア・アンド・スペース・パワー研究』(第7号)、75-93頁
3 主な意見交換
○世界が米中の競争時代と言われている中、日本の立ち位置は重要である。米国がアジアでのパワープロジェンションを実施する中にあって日本が重要。車力のXBレーダー展開などは、極めて貴重な米軍に対する貢献である。
○ガイドラインの見直し等については、実効性の観点から日米の一体化を確保することが重要である。JADC2, AMBS など、人が介在する余地を少なくした作戦において、日米共同で構築できるよう積極的に関与していくべき。
○日米一体化の議論については、司令部組織として統合司令部の検討があるが、中々結論が出ていない。ただし、太平洋空軍と総隊の連携は共同調整所を双方の間に設けられ、それぞれに連絡網もあり場所が離れていても一体化はできているとの認識はある。
○違った見方がある。日米同盟は今一番問われており、逆に危機的状況にあると思料。日本は米国と同じ立場には立てない。案件毎に米国とどう向かっていくのか、Quad, FOIP, 5eyes などを柔軟に使っていく時代ではないか。
○同盟にはジレンマがある。巻き込まれと、見捨てられである。実効性のある安全保障については、主体性(自主性)、実効性を忘れないことが重要。
○日米共同について、日本は主体性を持ちつつ参加する必要がある。今後は、ハイブリッド戦と多正面複合事態が想定され、日米同盟だけでは対応できないのではないか。有志連合が、米国ブロックの中でどのように対応していくのかなども検討すべき。
○今回勉強会で、一度結んだ同盟も変わり得るものと感じた。宇宙・サイバー・電磁波の新領域に、AI 、量子技術、気候変動環境変化に加えた対中政策全般を把握することで日本が主体性を確保することが重要。
○サイバーの世界から見ると、抑止力は難しい。具体的には日米間での役割分担と情報共有が重要になる。Quad, NATO, 5eyes との連携に必要な情報セキュリティ対策も具体的に準備しておくべきである。
第5回研究テーマ(8月):「包括的抑止戦略に基づく防衛力整備のあり方について」
R03年度上半期の研究テーマである「『包括的抑止戦略』構築の為の課題と取り組みについて」を考えるにあたって、防衛力整備の特性、予算上の各種制約、既存の装備体系、戦力組成等を踏まえた論点、見直しの方向性等について、包括的抑止戦略に必要な能力、統合運用構想(南西域における島嶼防衛)、IAMD、米軍の対中戦略・作戦構想、米空軍の目指す将来的な戦い方(JADC2、ABMS 等)、第三のオフセット戦略(ゲームチェンジャー技術等)をキーワードにしながら、意見交換する。
2 参考資料等
①高橋杉雄、「「ミサイル阻止に関わる安全保障政策」を巡る論点整理」、NIDS コメンタリー第 140 号、2020 年 10 月 29 日
②尾上定正、「新防衛計画の大綱並びに新中期防衛力整備計画の評価と課題」
三井物産戦略研究所 防衛レポート No.1、2019 年 1 月 31 日
③防衛研究所「戦略的マネジメント」研究チーム、「結章 軍事力の戦略的マネジメント」、平成 24 年度安全保障国際シンポジウム報告書、2012 年 10 月、215-225 頁
④吉崎知典、「序章 防衛力の戦略的マネジメント」、平成 24 年度安全保障国際シンポジウム報告書、2012 年 10 月、7-16 頁
⑤荒木淳一、「「モザイク・ウォーフェア(MW)」を理論的ベースとする米空軍の最近の動向の概要とその背景について」2021.06.08、p9-28
⑥平田英俊、山下愛仁「包括的抑止戦略の必要性と防衛力整備の在り方について」『エア・アンド・スペース・パワー研究』(第 7 号)、75-93 頁
第5回(8月)勉強会における主な意見等
R03年度上半期の研究テーマである「『包括的抑止戦略』構築の為の課題と取り組みについて」を考えるにあたって、防衛力整備の特性、予算上の各種制約、既存の装備体系、戦力組成等を踏まえた論点、見直しの方向性等について、包括的抑止戦略に必要な能力、統合運用構想(南西域における島嶼防衛)、IAMD、米軍の対中戦略・作戦構想、米空軍の目指す将来的な戦い方(JADC2、ABMS 等)、第三のオフセット戦略(ゲームチェンジャー技術等)をキーワードにしながら、意見交換する。
2 参考資料等
①高橋杉雄、「「ミサイル阻止に関わる安全保障政策」を巡る論点整理」、NIDS コメンタリー第 140 号、2020 年 10 月 29 日
②尾上定正、「新防衛計画の大綱並びに新中期防衛力整備計画の評価と課題」
三井物産戦略研究所 防衛レポート No.1、2019 年 1 月 31 日
③防衛研究所「戦略的マネジメント」研究チーム、「結章 軍事力の戦略的マネジメント」、平成 24 年度安全保障国際シンポジウム報告書、2012 年 10 月、215-225 頁
④吉崎知典、「序章 防衛力の戦略的マネジメント」、平成 24 年度安全保障国際シンポジウム報告書、2012 年 10 月、7-16 頁
⑤荒木淳一、「「モザイク・ウォーフェア(MW)」を理論的ベースとする米空軍の最近の動向の概要とその背景について」2021.06.08、p9-28
⑥平田英俊、山下愛仁「包括的抑止戦略の必要性と防衛力整備の在り方について」『エア・アンド・スペース・パワー研究』(第 7 号)、75-93 頁
3 主な意見交換
〇指揮統制(C2)に関しては、米軍も変わってきている。モザイク・フォーフェア(MW)の中では米軍のC2はフラットになってきている。統合作戦をスピード感持って行うことが大切。対中国を考えると政治主導でなければならない。
〇サイバー分野においてもC2をやるとした場合、どのようにOODAループを行っていくのか、他の任務との整合性をどのように図るのか、これまでは議論が低調だ。これからは官民協力は不可欠であり、具体的なニーズを民側に伝える必要がある。
〇ミッチェルのMWは重要な概念で良い内容である。いろんなシステムが個々にダメージを受けても機能する構成を持つことは重要。特にJADC2は肝要。
〇防衛力整備にあたっては、長期的な検討・見積りが極めて重要である。しかし、10~20年先を予測することは難しい。検討の幅を議論することが必要。
〇防衛大綱の策定にはフィジビリティを伴うことが大切。今や国家総力を使って戦わなければならない時代であり、国力の見える化、中でも軍事力が重要。
〇米軍は平素から数多くの民間企業を評価している。宇宙領域では軍よりも民間企業が関与しているケースが圧倒的に多い。自衛隊は装備品の購入が主体となっているイメージ強い。民間企業の連携をり図ることと、ドクトリン、作戦構想を重視する姿勢が必要。
〇情報とC4ISRが今の戦いの中心を担っている中で、米国とどのようにこれを共有するのか、JADC2/AMBSにどのように空自が関与していくかについて、必ず検討していく必要がある。
第6回研究テーマ(10月):「包括的抑止戦略に基づく防衛力整備のあり方について」
1 今回の研究テーマ
上半期の勉強会(第1回~第5回)の議論を踏まえ、同半期のテーマである「包括的抑止戦略を実行するための課題と取り組みの方向性等について」、政府レベル(国家安全保障戦略レベル)、防衛省レベル(国防戦略、軍事戦略レベル)、空自レベルの課題と今後の取り組みの方向性を明らかにする。
2 参考資料等
①R03年度第1回~第5回勉強会の提示資料及び各勉強会の要約資料
②柳澤協二、道下徳成、小川伸一、植木(川勝)千可子、山口昇、加藤朗、廣瀬佳一、「Ⅰ 抑止力の意味と日本の防衛政策-道下徳成氏との対話-」、『抑止力を問う-元政府高官と防衛スペシャリスト達の対話』、かもがわ出版、2010年10月20日、p9-48
③「Ⅱ 冷戦終了後の核抑止力の行方-小川伸一氏との対話-」同上、p49-80
④「Ⅲ 「リベラル抑止」という考え方-植木(川勝)千可子氏との対話-」同上、p81-120
⑤「Ⅴ 日本独自の安全保障を構想する-加藤朗氏との対話-」同上、p157-188
⑥平田英俊、山下愛仁「包括的抑止戦略の必要性と防衛力整備の在り方について」『エア・アンド・スペース・パワー研究』(第7号)、75-93頁
第6回(10月)勉強会における主な意見等
1 今回の研究テーマ
上半期の勉強会(第1回~第5回)の議論を踏まえ、同半期のテーマである「包括的抑止戦略を実行するための課題と取り組みの方向性等について」、政府レベル(国家安全保障戦略レベル)、防衛省レベル(国防戦略、軍事戦略レベル)、空自レベルの課題と今後の取り組みの方向性を明らかにする。
2 参考資料等
①R03年度第1回~第5回勉強会の提示資料及び各勉強会の要約資料
②柳澤協二、道下徳成、小川伸一、植木(川勝)千可子、山口昇、加藤朗、廣瀬佳一、「Ⅰ 抑止力の意味と日本の防衛政策-道下徳成氏との対話-」、『抑止力を問う-元政府高官と防衛スペシャリスト達の対話』、かもがわ出版、2010年10月20日、p9-48
→ 抑止の概念がわかりやすく、抑止と戦略を整理する上での参考。
③「Ⅱ 冷戦終了後の核抑止力の行方-小川伸一氏との対話-」同上、p49-80
→ 日本において、これまでの核抑止に関する議論を知り得る内容。
④「Ⅲ 「リベラル抑止」という考え方-植木(川勝)千可子氏との対話-」同上、p81-120
→ リベラル抑止の考え方を明らかにした内容。
⑤「Ⅴ 日本独自の安全保障を構想する-加藤朗氏との対話-」同上、p157-188
⑥平田英俊、山下愛仁「包括的抑止戦略の必要性と防衛力整備の在り方について」『エア・アンド・スペース・パワー研究』(第7号)、75-93頁
3 主な意見交換
〇これからの空自は、防衛力整備上の知的基盤を構築するために、従前の分を含め成果を蓄積していくことが重要。幹部学校にとって、空幕との認識の共有と資料蓄積が重要な課題である。
〇今回の勉強会では、抑止の中核が軍事力であることを再認識。様々な要素を踏まえた上で抑止を考える気づきとなった。今後は、空自としての組織改革のプロセスの在り方を考えていくべき。
〇防衛力整備にあたっては、軍事力以外の政府機関の機能や商用の機能を含めて活用することが重要。また今後は抑止及び対処について、国家一丸のオペレーションといった意味合いが強くなっていく。
〇日本には光通信などの突き抜ける技術力がある。中国と対峙する中で、こうした日本の強みを見出していくことが大切。米国にしてみると、日米同盟は数ある同盟関係の一つにしか過ぎない。今後は多国間関係の現状を踏まえて日米同盟を考えていくことが必要。
〇米国が西太平洋で本当に軍事力を行使する覚悟があるかが今後の焦点。台湾防衛にしても日本防衛にしても、中国からの核攻撃のリスクは常にある。このため、日本はより自律的な防衛態勢を考えるべきで、核の問題も避けては通れない。
〇次期中期防の策定にあたっては、まず今期5年間の評価なり総括を実行すべき。
〇幹部学校の役割として、研究内容の蓄積とともに、人材の発掘と育成が重要課題でる。
〇力の信奉者である中国に対しては、装備の充実は非常に大切な要素。戦略策定にあたってはネットアセスメントに基づく装備体系なり運用方法を確立させるべきである。
〇今後の防衛力整備では、JADC2及びABMSがキーワードとなる。また、戦略策定にあたっては技術力の議論が必要であり、民間力の活用を含めた検討を進めるべき。
第7回研究テーマ(10月):「国家安全保障戦略の現状と課題について」
1 今回の研究テーマ
03年度上半期の研究成果等を踏まえ、来年に予期される現行の国家安全保障戦略、防衛計画の大綱(30大綱)/中期防衛力整備計画(31中期)の見直しに資するため、下半期のテーマは「我が国の国家安全保障戦略のあり方について」とする。
今回は、その第一回目として、我が国の現行の国家安全保障戦略(2013年)を含め、国家安全保障戦略上の課題について議論する。
2 参考資料等
①「国家安全保障戦略について」2013年12月
②「R02年度F3プロジェクト第10回勉強会」レジメ及び要約
③「政策提言 新たな安全保障戦略-高まる脅威と不透明な国際環境に立ち向かう-」平和・安全保障研究所(RIPS)、2018年7月23日
第7回(10月)勉強会における主な意見等
1 今回の研究テーマ
03年度上半期の研究成果等を踏まえ、来年に予期される現行の国家安全保障戦略、防衛計画の大綱(30大綱)/中期防衛力整備計画(31中期)の見直しに資するため、下半期のテーマは「我が国の国家安全保障戦略のあり方について」とする。
今回は、その第一回目として、我が国の現行の国家安全保障戦略(2013年)を含め、国家安全保障戦略上の課題について議論する。
2 参考資料等
①「国家安全保障戦略について」2013年12月
②「R02年度F3プロジェクト第10回勉強会」レジメ及び要約
③「政策提言 新たな安全保障戦略-高まる脅威と不透明な国際環境に立ち向かう-」平和・安全保障研究所(RIPS)、2018年7月23日
3 主な意見交換等
(1)意見交換に先立ち、上記資料を基にした全般説明(30分)
〇昨年の勉強会成果に基づき、、我が国の戦略を考えるにあたっての経緯及び特性を再確認。議論を進める上で国家防衛戦略の体系、構成、内容及びその変遷を理解しておくことが必要。
〇我々が議論すべき国家防衛戦略は、民主主義国家における国家レベルの戦略であり、国民の理解と支持を得るために国民に提示し、議論されるべきもの。
〇我々は、軍事専門家としては、合理的な判断に基づき、政治に対する軍事的選択肢(心構えを含む)を示すことが必要である。
(2)国家安全保障戦略が抱える課題と見直しの方向性に関する主な意見等(1時間)
〇日本がオールジャパンとして主体的にサイバーセキュリティに対応する組織がないことが大きな問題。またドローンの脅威的な発達に対する安全保障上の議論が希薄。
〇組織的な観点では、安全保障戦略を考えるにあたり、外務、防衛、警察等に対する横ぐしが必要。
〇常設統合司令部の設置をはじめ、統合ビジョンの下の防衛力整備が進められていることについて、あらためて見直すべき。(未だに実現できていないことへの危惧)
〇現行の国家安全保障戦略は大きく陳腐化しているところはない。しかし、問題は、同戦略の内容そのものよりも、当該戦略の活用の仕方、実現の具体的目標及び方向が示されていないのが大きな課題。
〇国家緊急権、緊急事態条項等について、整理することが喫緊の課題である。
〇国家安全保障戦略の見直しにあたって、ネットアセスメントの充実が不可欠。また経済安全保障戦略等を取り込んだ、真の包括的安全保障戦略を体系的に確立することが重要。
〇国家戦略の前提に平和国家があることから、守勢の概念に終始している。結果として、実戦的でなく、危機管理上の問題があると言わざるを得ない。
〇国家安全保障戦略に対する国民の理解が肝である。したがって、同戦略の要約版を作成すべきではないか。
第8回研究テーマ(11月):「国家安全保障戦略上の中国の評価等」
1 今回の研究テーマ
03年度上半期の研究成果等を踏まえ、来年に予期される現行の国家安全保障戦略、防衛計画の大綱(30大綱)/中期防衛力整備計画(31中期)の見直しに資するため、下半期のテーマは「我が国の国家安全保障戦略のあり方について」とする。今回は、その第二回目として、国際安全保障環境の構造的変化の主因となっている中国の評価(脅威認識等)、我が国への影響等について、様々な視点から議論する。
2 参考資料
①前田祐司「2030年米中二極構造と日本の安全保障」NIDSブリーフィング・メモ、2019年10月号
②-1 船橋洋一・細谷雄一・神保謙、「分断する世界で日本に求められる役割とは何か ― 大きく変動した日米中めぐる国際秩序の本質」「API地経学ブリーフィング」No.49、2021年04月20日、https://apinitiative.org/2021/04/20/19735/
②-2 船橋洋一・細谷雄一・神保謙、「日本の対米・対中戦略に一体何が求められるか― どちらつかずの宙吊り状態は避けねばならない」「API地経学ブリーフィング」No.50、2021年04月26日、https://apinitiative.org/2021/04/26/20916/
②-3 船橋洋一・細谷雄一・神保謙、「日本が国際的な敗者にならない為に必要なこと ― 対米、対中を軸にした経済安全保障戦略の要諦」「API地経学ブリーフィング」No.51、2021年05月03日、https://apinitiative.org/2021/05/03/20984/
③ 目次、『ディフェンス』59号、令和3年10月31日
④ 渡部柴乃「中国の脅威をどう考えるか」、『ディフェンス』59号、令和3年10月31日、p18-29
⑤ 渡邊金三「台湾海峡有事について」、『ディフェンス』59号、令和3年10月31日、p68-81
⑥ 青木節子「中国の台頭と新たな宇宙抑止の可能性」、『ディフェンス』59号、令和3年10月31日、p112-124
⑦ 道下徳成「第8章インド太平洋地域のパワーシフト-中国の台頭と日本の対応」『地政学原論』庄司潤一郎・石津朋之編著、日本経済新聞出版部、2020年7月15日、p216-240
⑧ J.ナイ「中国・ロシア 異なる脅威」読売新聞記事、2021年10月27日
⑨「Military and Security Involving the People’s of Republic China 2021」
A Report to Congress, Office of the Secretary of Defense.
第8回(11月)勉強会における主な意見等
1 今回の研究テーマ
03年度上半期の研究成果等を踏まえ、来年に予期される現行の国家安全保障戦略、防衛計画の大綱(30大綱)/中期防衛力整備計画(31中期)の見直しに資するため、下半期のテーマは「我が国の国家安全保障戦略のあり方について」とする。今回は、その第二回目として、国際安全保障環境の構造的変化の主因となっている中国の評価(脅威認識等)、我が国への影響等について、様々な視点から議論する。
2 参考資料
①前田祐司「2030年米中二極構造と日本の安全保障」NIDSブリーフィング・メモ、2019年10月号
②-1 船橋洋一・細谷雄一・神保謙、「分断する世界で日本に求められる役割とは何か ― 大きく変動した日米中めぐる国際秩序の本質」「API地経学ブリーフィング」No.49、2021年04月20日、https://apinitiative.org/2021/04/20/19735/
②-2 船橋洋一・細谷雄一・神保謙、「日本の対米・対中戦略に一体何が求められるか― どちらつかずの宙吊り状態は避けねばならない」「API地経学ブリーフィング」No.50、2021年04月26日、https://apinitiative.org/2021/04/26/20916/
②-3 船橋洋一・細谷雄一・神保謙、「日本が国際的な敗者にならない為に必要なこと ― 対米、対中を軸にした経済安全保障戦略の要諦」「API地経学ブリーフィング」No.51、2021年05月03日、https://apinitiative.org/2021/05/03/20984/
③ 目次、『ディフェンス』59号、令和3年10月31日
④ 渡部柴乃「中国の脅威をどう考えるか」、『ディフェンス』59号、令和3年10月31日、p18-29
⑤ 渡邊金三「台湾海峡有事について」、『ディフェンス』59号、令和3年10月31日、p68-81
⑥ 青木節子「中国の台頭と新たな宇宙抑止の可能性」、『ディフェンス』59号、令和3年10月31日、p112-124
⑦ 道下徳成「第8章インド太平洋地域のパワーシフト-中国の台頭と日本の対応」『地政学原論』庄司潤一郎・石津朋之編著、日本経済新聞出版部、2020年7月15日、p216-240
⑧ J.ナイ「中国・ロシア 異なる脅威」読売新聞記事、2021年10月27日
⑨「Military and Security Involving the People’s of Republic China 2021」
A Report to Congress, Office of the Secretary of Defense.
3 主な意見交換
〇中国との付き合いにおいては、軍事・経済等、幅広くバランスの取れた関係構築が必要。中国の軍事力強化には抑止が対応。日本単独の力には限界があり、孤立することを回避すべき。
〇核戦力に関して、既に米国を超えているとも言われている。そうだとすると米国が地域紛争に介入できない恐れがあるのではないか。
〇中国との関係において、日本は共通の利益を見出す必要がある。一方、台湾問題については、日本のスタンスを明確にすべき。
〇中国民族の夢、経済力、軍事力の向上を甘く見るべきではない。中国を抑止するためには、対立の最前線に位置する日本の対応が重要。
〇中国の脅威について3点。①現在の中国を冷戦期のソ連と比較するのは意味がある②線戦力に関して、米国依存では我が国を守れないのではないか③台湾問題については、中国の軍事戦略の実態を客観的に見極める必要がある。
〇我が国安全保障戦略には戦争終結の状況がない。台湾有事も事態終結後の体制を考えておくべき。
〇中国が日本を核攻撃する反日プロパガンダのビデオが作成された。これは核の先制使用を意味するもので、日本にとって由々しき問題。拡大抑止の実効性を高めることが、日本の安全保障にとって極めて重要。
第9回研究テーマ(12月):「国家安全保障戦略上の課題(見直すべき政策等)」
1 今回の研究テーマ
03年度上半期の研究成果等を踏まえ、来年に予期される現行の国家安全保障戦略、防衛計画の大綱(30大綱)/中期防衛力整備計画(31中期)の見直しに資するため、下半期のテーマは「我が国の国家安全保障戦略のあり方について」である。
今回は、その第三回目として、国家安全保障戦略に盛り込むべき防衛政策の考え方、見直すべき事項等について、様々な視点から議論する。
2 参考資料等
①「国家安全保障戦略について」2013年12月
②「政策提言 新たな安全保障戦略-高まる脅威と不透明な国際環境に立ち向かう-」平和・安全保障研究所(RIPS)、2018年7月23日
③国家安全保障戦略研究会「新たな「国家安全保障戦略」に求められるもの-激動する国際情勢に立ち向かうために-」2021年11月、p3-11、p32-46
④R03年度F3プロジェクト 第3回勉強会提示資料 R03.06.13
第9回(12月)勉強会における主な意見等
1 今回の研究テーマ
03年度上半期の研究成果等を踏まえ、来年に予期される現行の国家安全保障戦略、防衛計画の大綱(30大綱)/中期防衛力整備計画(31中期)の見直しに資するため、下半期のテーマは「我が国の国家安全保障戦略のあり方について」である。
今回は、その第三回目として、国家安全保障戦略に盛り込むべき防衛政策の考え方、見直すべき事項等について、様々な視点から議論する。
2 参考資料等
①「国家安全保障戦略について」2013年12月
②「政策提言 新たな安全保障戦略-高まる脅威と不透明な国際環境に立ち向かう-」平和・安全保障研究所(RIPS)、2018年7月23日
③国家安全保障戦略研究会「新たな「国家安全保障戦略」に求められるもの-激動する国際情勢に立ち向かうために-」2021年11月、p3-11、p32-46
④R03年度F3プロジェクト 第3回勉強会提示資料 R03.06.13
3 主な意見交換
〇NSSの見直しにあたってのポイントとして、これまでの勉強会を踏まえると、以下の2点が必要である。
①ネットアセスメントについて、我が国の司令塔であるNSCにネットアセスメント機能を整備すべき。
②戦争終結について、事態を如何に終結に導くかを国家戦略レベルで考えておくことが必要である。対中国の劣勢な状況における損害受任度を踏まえ戦略を立てるべき。
〇以下の4点を提案したい。
①専守防衛の看板の架け替えは難しいので、解釈を変え攻撃力を保有する。
②非核三原則を見直し、対中・中距離核戦力の日本受け入れにより抑止力を確保すべき。
③防衛費を増額し、AIや量子技術などの先端技術の研究開発費に投資すべき。
④日米同盟を、今までの盾と矛の関係に限定するのではなく、それぞれが得意な役割を果たせるよう変えて行くべき。
〇NSSには公開と非公開バージョンが必要であり、国家軍事戦略を非公開で策定すべき。専守防衛についての見直しにあたり、侵略国にならないとの対外的宣言を変えることになり、周辺国からの反発が予期される。平和国家を継続し自衛権に基づく防衛に徹することを宣言するべく、新たな政策を作る必要がある。専守防衛に代わるコンセプトについてコンセンサスを得て、それに見合ったワーディングが必要である。
〇NSSの策定にあたっては国家として総力を挙げた取り組みが必要であり、安全保障専門家だけで戦略を考えていてはいけない。国家的な課題として人口減少の問題があるが、省人化や無人化に向け、国家の総力を挙げて現実的な方策を考えることに着手するべきである。
〇防衛力整備について今までのように中央計画によるトップダウンのやり方ではなく、災害派遣における参考品取得したドローンの活用のように、現場におけるニーズに基づく装備も必要ではないか。また、日米共同作戦を実施する現場の意見として、調整に基づく作戦実施は困難であるとともに、米国だけではなく多国間の共同作戦を実施する体制になっていないことから、C2を一本化することが必要ではないか。現場からの運用ニーズを空幕における防衛力整備に反映するための連携を図るべきだし、防衛力整備を作戦運用のニーズに基づく体制整備にしていく必要がある。
〇専守防衛については解釈を変える、看板を変えるといった意見が出ているが、看板を下ろすのも選択肢ではないか。対外的な看板政策としては役割を終えているので、下ろすことにより一部の国からはネガティブな反応があるかもしれないが、これまでの実績に基づけば一時的なものではないか。日米共同のC2を考えるうえで、まずは自衛隊が統合されていないのが一番の問題であり、常設の統合司令部を作り、日本防衛であれば日米共同作戦計画を我が国が主体となって作成し、重要影響事態や存立危機事態などでは米軍が主体となって作戦を行うことになる。このため、自衛隊がいかに協力またか支援するかの計画を作成しておくことが重要。
〇戦略策定のプロセスとしてWar Game の実施はとても有効である。Road to crisis を確認し、End State を実現するためのCorse of Action をWar Game を通じて案出するが、その過程で政治的、軍事的及び経済的合理性が激しくぶつかる中でEnd Stateを如何に達成するかを議論すべき。戦略策定にWar Gameは有効であるとともに、例えば専守防衛を掲げ米国と同盟関係で行動する我が国が、抑制的行動を自認するものの、他国の我が国に対する認識を確認することが可能である。C2についても確認ができる可能性あり。
〇NSS見直しにあたり、3点述べたい。
①経済安全保障の流れに乗り、産官学の連携を進めるべき。防衛予算が増加しても今までの積み上げでは規模が大きくなるだけなので、各会が持てる技術や知識を持ち寄ってスピード感のある体制整備ができるようにしてもらいたい。
②日米同盟の強化にあたって、我が国が得意分野や長所を生かし主体性のある共同関係を築くことが日米同盟のさらなる強化には必要である。
③NSSを頂点として安全保障に関して省庁間に横串を刺す必要がある。省庁はストーブパイプである上に安保が欠落しているところもあるので、NSSを関係する各省庁の業務に落とし込めるようにすべき。
第10回研究テーマ(1月):「国家安全保障戦略上の課題(防衛産業、技術基盤等)」
1 今回の研究テーマ
03年度上半期の研究成果等を踏まえ、来年に予期される現行の国家安全保障戦略、防衛計画の大綱(30大綱)/中期防衛力整備計画(31中期)の見直しに資するため、下半期のテーマは「我が国の国家安全保障戦略のあり方について」である。
今回は、その第四回目として、国家安全保障戦略に盛り込むべき経済安保戦略、技術・産業戦略等の考え方、見直すべき事項等について、様々な視点から議論する。
2 参考資料等
①国家安全保障戦略研究会「新たな「国家安全保障戦略」に求められるもの-激動する国際情勢に立ち向かうために」2021年11月、p9-10、p30、p59-69
②高見澤将林、村野将「抑止力とは何か」、『公研』2021年11月号、p1-19
③API地経学ブリーフィングNo.80、No81、No82
鈴木一人「日本の「経済安全保障」絶対押さえておきたい論点 ― 国家安全保障戦略と目的は同じでも手段は異なる」API地経学ブリーフィングNo.80(2021年11月22日)
細谷雄一「日本の経済安全保障に多層的視点が欠かせない訳 ― 国家安全保障の中核としての国際戦略を推進せよ」API地経学ブリーフィングNo.81(2021年11月29日)
神保謙「日本の経済安全保障「軍事領域」で押さえたい要点― 新興技術との繋がりに不可欠な保全・育成・連携」 API地経学ブリーフィングNo.82(2021年12月6日)
④尾上定正「日本の経済安全保障「防衛産業」の議論が欠ける訳-新興分野と一体で強い安全保障生産・技術基盤を」東洋経済オンライン(2022/01/17)
https://toyokeizai.net/preview/ca2ab757e01e1864a2636052b2a92ecbdc5ca499
⑤澤田寛人「新興技術・抑止・危機のバーゲニング―道下徳成編著『「技術」が変える戦争と平和』(芙蓉書房出版2018年)」『戦略研究29 科学技術と戦略』2021年10月、79-92頁
⑥奥山真司「戦略研究におけるテクノロジーの捉え方」『戦略研究29 科学技術と戦略』2021年10月、15-24頁
⑦防衛省「防衛生産・技術基盤戦略(概要)」、平成26年6月
⑧宮本雄二「『新しい冷戦』のコアの論点 技術覇権と技術管理」『米中技術覇権競争と日本』日本経済研究センター、2020年2月、15-40頁
第10回(1月)勉強会における主な意見等
1 今回の研究テーマ
03年度上半期の研究成果等を踏まえ、来年に予期される現行の国家安全保障戦略、防衛計画の大綱(30大綱)/中期防衛力整備計画(31中期)の見直しに資するため、下半期のテーマは「我が国の国家安全保障戦略のあり方について」である。
今回は、その第四回目として、国家安全保障戦略に盛り込むべき経済安保戦略、技術・産業戦略等の考え方、見直すべき事項等について、様々な視点から議論する。
2 参考資料等
①国家安全保障戦略研究会「新たな「国家安全保障戦略」に求められるもの-激動する国際情勢に立ち向かうために」2021年11月、p9-10、p30、p59-69
②高見澤将林、村野将「抑止力とは何か」、『公研』2021年11月号、p1-19
③API地経学ブリーフィングNo.80、No81、No82
鈴木一人「日本の「経済安全保障」絶対押さえておきたい論点 ― 国家安全保障戦略と目的は同じでも手段は異なる」API地経学ブリーフィングNo.80(2021年11月22日)
細谷雄一「日本の経済安全保障に多層的視点が欠かせない訳 ― 国家安全保障の中核としての国際戦略を推進せよ」API地経学ブリーフィングNo.81(2021年11月29日)
神保謙「日本の経済安全保障「軍事領域」で押さえたい要点― 新興技術との繋がりに不可欠な保全・育成・連携」 API地経学ブリーフィングNo.82(2021年12月6日)
④尾上定正「日本の経済安全保障「防衛産業」の議論が欠ける訳-新興分野と一体で強い安全保障生産・技術基盤を」東洋経済オンライン(2022/01/17)
https://toyokeizai.net/preview/ca2ab757e01e1864a2636052b2a92ecbdc5ca499
⑤澤田寛人「新興技術・抑止・危機のバーゲニング―道下徳成編著『「技術」が変える戦争と平和』(芙蓉書房出版2018年)」『戦略研究29 科学技術と戦略』2021年10月、79-92頁
⑥奥山真司「戦略研究におけるテクノロジーの捉え方」『戦略研究29 科学技術と戦略』2021年10月、15-24頁
⑦防衛省「防衛生産・技術基盤戦略(概要)」、平成26年6月
⑧宮本雄二「『新しい冷戦』のコアの論点 技術覇権と技術管理」『米中技術覇権競争と日本』日本経済研究センター、2020年2月、15-40頁
3 主な意見交換
〇我が国における経済安全保障の議論の中で、軍事(防衛)は、特別扱いされる雰囲気がある。そうではなくて、経済安全保障と軍事(防衛)は絡み合っているし、軍事(防衛)抜きの議論は全く意味をなさない。
〇経済と軍事の相関にあって、例えば、日本が中国からのレアアースを止められたり、逆に中国に対する資産凍結をしたり、スイフトを止めるなど、経済的な手段での攻防が考えられるが、経済的手段の強さと脆弱性、さらには軍事的手段の優劣を具体的に評価していかなければならない。
〇また、軍事力の中にも経済的な要素や技術的な要素がある。例えばサプライチェーンなどはその典型であるが、軍事力を議論する時に、ベースとなる技術だとか、経済だとかをしっかりと考えて、日本の安全保障戦略、防衛戦略を考えていかなければならない。
〇経済安全保障戦略の構築が、今回の国家安全保障戦略見直しの目玉となっているが、両者が結び付けられてオールジャパンでやらなければならないところ、実態としては防衛省と経産省のセクショナリズム的なところが残念ながら見受けられて、うまくいっていない。
〇我が国においては、従来の軍民関係における在り方においてすら遅れがあるところ、日本版DAPPAを設立すべきとの考えと併せて、民間企業側からの動きを積極的に吸収するための仕組みを構築することが重要。
〇国家安全保障戦略と経済安全保障戦略が切り離されて議論されている現実を憂慮している。日本の場合は、個別に省庁ごとに考えている傾向がある。戦略は国家レベルで考える必要があり、ウォーゲーム等をとおして、政治・経済・軍事等、様々な要素を分析することが重要であり、さらには、各分野、機能を検証する場が必要と認識。
〇ウォーゲームにおいては、現有装備品を使用しての検討に加えて、将来の戦い方を見据え、新たな技術をいかに取り込むかを念頭に置いた検討を進めていく必要がある。
〇ウォーゲームの有益なところは、相手の視点に立って見るというところ。戦争なり戦闘は相互作用により進めていくものであるため、相手の視点の中でどのような手段を取り得るか、相手側から見た時に我の戦力がどのように見えるのかが大きな気付きとなるので、部隊整備なり防衛力整備に際して極めて有用であると認識。
〇技術戦略においては、保全すべき情報を明確にし管理するための枠組みが必要。人材育成は重要でありどのように育てるか、担保していくかが重要。産官学の連携については、人のみならず、ハード、ソフトを含めた技術的な連携が重要。また、何を創るかに併せて、何を壊すかということも重要と認識。
〇何を壊すかというより、ブレークスルーすると言葉を使われたが、何を超えていくか、現在の枠組をどのように変えていくかということだと理解。まさにそれは作戦運用を中心に何をしなければならないのか、そのために何を装備しなければならないかという発想が必要。今の枠組みで何ができますか、から何をしなければならないので現在の枠組みを変える必要があるとの発想が必要と認識。
〇「運用する技術」というものがあるのではないかと思う。技術は、運用とのコラボレーションがなければ役に立たない。新たな技術の導入にはブレーキがかかりがちであるが、特に新興技術の活用は待ったなしの状況。官民協力の在り方が重要となるが、具体的にクリアランスの問題があり、インテリジェンス側から拒否されると連携できなくなるのも事実。情報共有と情報管理(保全)は両輪でうまくやっていかなければならない。
〇統合抑止の中で、全政府的、あるいは同盟国等と連携しながらというのがあるが、民間力の活用というものがあるのではないかと思う。米国の宇宙軍は、民間力の活用、政府、同盟国というように最初に民間力の活用を重視している。我が国における技術・生産基盤というのは抑止力になることを理解してやっていかないといけない。
〇「医療安全保障」についてである。コロナという有事に際して、早急に対処すべき事項とともに、日ごろから準備しておくべきであった事項が少しずつ明らかになってきており、是非とも国の施策として提言したいとの訴えが県民、国民の共感を得た。切迫した危機感、実例という観点で参考になると思う。今回の三文書見直しにおいても、軍事に関する切迫した危機感を政治や国民にいかに訴えるかが重要と認識。
第11回研究テーマ(2月):「国家安全保障戦略上の課題(新領域及び環境問題への取り組み方等)」
1 今回の研究テーマ
03年度上半期の研究成果等を踏まえ、来年に予期される現行の国家安全保障戦略、防衛計画の大綱(30大綱)/中期防衛力整備計画(31中期)の見直しに資するため、下半期のテーマは「我が国の国家安全保障戦略のあり方について」である。今回は、その第5回目として、国家安全保障戦略に盛り込むべき新領域(宇宙・サイバー・電磁波)への取組み、気候変動などのグローバル・イシュー等への取組み等について、様々な視点から議論する。
2 参考資料等
①国家安全保障戦略研究会「新たな「国家安全保障戦略」に求められるもの-激動する国際情勢に立ち向かうために」2021年11月、p8、p10、p56-60
②長島純「戦闘領域化する宇宙ー進化に対応するレジリエンス強化が必要」、国際情報ネットワーク分析 IINA、2020年7月8日 https://www.spf.org/iina/articles/nagashima_02.html
③空自幹部学校「4 日本の宇宙開発と宇宙機能の全体像」、『エア・アンド・スペース・パワー研究』第7号別冊、令和3年3月31日、p33-43
④KPMGジャパン、「Navigating Space 宇宙防衛のビジョン」Aug, 2021
⑤福島康仁、「宇宙利用の優位を如何に確保するか?-論点の整理-」、『エア・アンド・スペース・パワー研究』第7号、令和3年3月31日、p39-49
⑥空自幹部学校「5 サイバー空間での対応に関係する国内法及び国内法」、『エア・アンド・スペース・パワー研究』第7号別冊、令和3年3月31日、p187-198
⑦時籐和夫、「抑止及び対処のための「真に実効的な防衛力」のあり方-サイバーの観点から-」『エア・アンド・スペース・パワー研究』第7号、令和3年3月31日、p46-49
⑧防衛装備庁「多次元統合防衛力の実現とその先へ-電磁波領域の取組み-」令和2年3月31日
⑨長島純「作戦領域化する気候変動-国連IPCC報告書から持続可能な軍のあり方を考える-」国際情報ネットワーク分析 IINA、2021年8月27日
第11回(2月)勉強会における主な意見等
1 今回の研究テーマ
03年度上半期の研究成果等を踏まえ、来年に予期される現行の国家安全保障戦略、防衛計画の大綱(30大綱)/中期防衛力整備計画(31中期)の見直しに資するため、下半期のテーマは「我が国の国家安全保障戦略のあり方について」である。今回は、その第5回目として、国家安全保障戦略に盛り込むべき新領域(宇宙・サイバー・電磁波)への取組み、気候変動などのグローバル・イシュー等への取組み等について、様々な視点から議論する。
2 参考資料等
①国家安全保障戦略研究会「新たな「国家安全保障戦略」に求められるもの-激動する国際情勢に立ち向かうために」2021年11月、p8、p10、p56-60
②長島純「戦闘領域化する宇宙ー進化に対応するレジリエンス強化が必要」、国際情報ネットワーク分析 IINA、2020年7月8日 https://www.spf.org/iina/articles/nagashima_02.html
③空自幹部学校「4 日本の宇宙開発と宇宙機能の全体像」、『エア・アンド・スペース・パワー研究』第7号別冊、令和3年3月31日、p33-43
④KPMGジャパン、「Navigating Space 宇宙防衛のビジョン」Aug, 2021
⑤福島康仁、「宇宙利用の優位を如何に確保するか?-論点の整理-」、『エア・アンド・スペース・パワー研究』第7号、令和3年3月31日、p39-49
⑥空自幹部学校「5 サイバー空間での対応に関係する国内法及び国内法」、『エア・アンド・スペース・パワー研究』第7号別冊、令和3年3月31日、p187-198
⑦時籐和夫、「抑止及び対処のための「真に実効的な防衛力」のあり方-サイバーの観点から-」『エア・アンド・スペース・パワー研究』第7号、令和3年3月31日、p46-49
⑧防衛装備庁「多次元統合防衛力の実現とその先へ-電磁波領域の取組み-」令和2年3月31日
⑨長島純「作戦領域化する気候変動-国連IPCC報告書から持続可能な軍のあり方を考える-」国際情報ネットワーク分析 IINA、2021年8月27日
https://www.spf.org/iina/articles/nagashima_08.html
3 主な意見交換
〇新領域の宇宙、サイバー、電磁波について共通しているのは、目に見えない領域であること。宇宙領域はキネティックな戦いを追求する傾向にあるが、宇宙物理学的視点で見ると今までにない速度感であり対応が難しい。サイバー及び電磁波も各領域を繋ぐものとして同様のことが言える。宇宙利用によるGPSなどの恩恵は国民の生活などに密接に関係しており、機能の抗たん性を持たせるために代替手段の確保などについて考える必要がある上、各領域を規定する法の整備が必要。
〇サイバー領域は認知領域に入ってきており、これまでの個人だけではなく、国家の活動が入ってきており大きな変化がみられる。サイバーは、インテリジェンスと融合することにより、相手の意図と何が起きようとしているのかが判明し、そこで初めて対応を考えることができる。
〇電波から得られる情報よりもサイバーで得られる情報の方がはるかに多いのが事実。サイバーインテリジェンスとインテリジェンスを有意義に融合しようとすると、どのようなテクノロジーを適用するか、或いはどのような運用を必用とするかが鍵。また、情報共有としては官民の融合、多国と必要な融合により優勢を確保していかなければならない。フェイク情報が出回る時代に独自の情報を持っていないと、適切な対応はできない時代となっている。
〇今何が起こっているかを見る際に、ミクロな視点と相手の意思に関わるマクロな見方を合わせてみる必要がある。サイバーの世界では、相手の意図を理解して手を打つことが、個々の事象に対応するよりもはるかに効果がある。またオープンソースだけでは何が起きているかはわからない。クローズソース、すなわちブラックマーケットに入り込み、状況認識を行った上で有効な手を打つといった、アクティブディフェンスが必要。
〇我が国のサイバー要員養成については遅れているが、有識者はいるので連携しながら、サイバー能力の向上を図るべき。司令塔の強化、認知領域をめぐる戦いの議論が難しいところはあるが、人間の認知領域に対する攻撃は極めて有効な手段であり、軍事的手段として認識され多用されている。
〇、構想主導型と現状改善型について考えると、現在の法律や制度の中で何ができるかを考えると現状改善型にならざるを得ない。構想主導型とは、現在サイバーや宇宙で何が起きているかを考え、その中でどのように自衛隊が任務を果たして行くかを考えなければならないが、現状はこの域にないと思料。ぜひ今後は構想主導型で考え、国を守る上で、サイバーで攻撃をしなければいけないのか、レジリエンスを高めていくべきかなどを検討し、攻撃が必要ならば政治に提言しなければならない。
〇宇宙を使って何をするのかを明確化する必要がある。航空自衛隊には宇宙防衛隊が編成されたが、何を護るのかが不明確であり、新戦略3文書では、宇宙で何をするのかを明確にすべき。具体的には、①宇宙利用:戦いに勝つため、通信のみならずISRなどを行う②②宇宙防衛:宇宙の安全な利用を監視するSSA及び機能保証の確保③政府全体とした対応、多国間協力のよる対応、民間力の活用
〇日本における宇宙開発は、自衛隊だけでなく皆と協力していくアプローチが必要。他省庁及び民間の能力が高いので、これを安全保障に巻き込んでいくことは自明。防衛省の中もコンセンサスができつつある。一方、これまで構想などが実現できていないと認識しており、如何に実装(装備化?)していくかが課題と認識。このためには人材の育成が最大の課題。
第12回研究テーマ(3月):「今後の課題と取組みの方向性について」
1 今回の研究テーマ
03年度上半期の研究成果等を踏まえ、来年に予期される現行の国家安全保障戦略、防衛計画の大綱(30大綱)/中期防衛力整備計画(31中期)の見直しに資するため、下半期のテーマは「我が国の国家安全保障戦略のあり方について」である。今回は、その最終回として国家安全保障戦略及び大綱/中期防見直しに向けて空自として取り組むべき課題、方向性等について議論する。
2 参考資料等
①F3プロジェクト上半期「『包括的抑止戦略』構築の為の課題と取り組みについて」に関する第1回から第6回までの提示資料
❶国際安全保障環境の基本構造と潮流の認識と評価
❷ネットアセスメントについて(概要、あり方等)
➌包括的抑止戦略に基づく我が国の防衛のあり方
❹包括的抑止戦略に基づく日米共同作戦計画のあり方
➎包括的抑止戦略に基づく防衛力整備のあり方
➏今後の課題と取り組みの在り方(まとめ)
②F3プロジェクト下半期「わが国の国家安全保障戦略のあり方について」に関する第7回から第11回までの提示資料
➐国家安全保障戦略の現状と課題等
➑中国の評価(脅威認識(米国、日本)、ネットアセスメント)
❾国家防衛戦略上の課題(見直すべき政策等)
➓経済安保戦略、技術・産業戦略等の在り方
⓫新領域への取り組み、環境問題への取り組み等の在り方
③国家安全保障戦略研究会「新たな「国家安全保障戦略」に求められるもの-激動する国際情勢に立ち向かうために」2021年11月
④尾上定正「令和の『敵基地攻撃能力』を考える」、『安全保障を考える』第802号、令和4年3月1日
⑤岩田清文「中国に向き合う国家安全保障戦略“私案”」、正論4月号(令和4年4月1日)、p32-50
⑥国家安全保障戦略(2013年2月)、30大綱、31中期防衛力整備計画
第12回(3月)勉強会における主な意見等
1 今回の研究テーマ
03年度上半期の研究成果等を踏まえ、来年に予期される現行の国家安全保障戦略、防衛計画の大綱(30大綱)/中期防衛力整備計画(31中期)の見直しに資するため、下半期のテーマは「我が国の国家安全保障戦略のあり方について」である。今回は、その最終回として国家安全保障戦略及び大綱/中期防見直しに向けて空自として取り組むべき課題、方向性等について議論する。
2 参考資料等
①F3プロジェクト上半期「『包括的抑止戦略』構築の為の課題と取り組みについて」に関する第1回から第6回までの提示資料
❶国際安全保障環境の基本構造と潮流の認識と評価
❷ネットアセスメントについて(概要、あり方等)
➌包括的抑止戦略に基づく我が国の防衛のあり方
❹包括的抑止戦略に基づく日米共同作戦計画のあり方
➎包括的抑止戦略に基づく防衛力整備のあり方
➏今後の課題と取り組みの在り方(まとめ)
②F3プロジェクト下半期「わが国の国家安全保障戦略のあり方について」に関する第7回から第11回までの提示資料
➐国家安全保障戦略の現状と課題等
➑中国の評価(脅威認識(米国、日本)、ネットアセスメント)
❾国家防衛戦略上の課題(見直すべき政策等)
➓経済安保戦略、技術・産業戦略等の在り方
⓫新領域への取り組み、環境問題への取り組み等の在り方
③国家安全保障戦略研究会「新たな「国家安全保障戦略」に求められるもの-激動する国際情勢に立ち向かうために」2021年11月
④尾上定正「令和の『敵基地攻撃能力』を考える」、『安全保障を考える』第802号、令和4年3月1日
⑤岩田清文「中国に向き合う国家安全保障戦略“私案”」、正論4月号(令和4年4月1日)、p32-50
⑥国家安全保障戦略(2013年2月)、30大綱、31中期防衛力整備計画
3 主な意見交換(2時間)
*この回は、冒頭の30分ほど使い、この1年間11回にわたり行ってきた毎月の勉強会成果を簡単に復習したのち、1年間を振り返ってのコメントおよび次年度に求める期待等について意見交換した。
(1)今年度の総括
〇陸海空の資源配分は、人だとかいろんな部分に関して、見直しをすべきだという議論は必要。基盤的防衛構想の付随物として出てきている大綱別表があり、それが時代に応じて若干の修正はされているものの、あまりに論証されていない。今回の3文書見直しの中で新しい戦略体系を作る時に併せて大綱に代わる国家防衛戦略を創るとするならば、その基である統合軍事戦略なるもの、所謂、作戦構想なるものをしっかりと作るべき。それに基づく戦力組成、或いは構成というものを改めて考えるタイミングとしては良いと思う。
〇抑止・対処の実効性を確保するような体制整備と作戦運用も作っていくというのが本当に大事だ。脅威が多様化しており、IAMDも進んでいない状況にあり、実態として拒否的抑止としての策源地攻撃、反撃能力を持つべきというのは単体としては出てきている。多様化したミサイル、航空機、極超音速のミサイルまで出てきている中にあって、それらにどう対処していくのかという構想も戦略もないのが現状。日本が主体的にやりながら日米で実効的に対処できる戦略を作って体制を整備する必要がある。
〇ウクライナ情勢に照らして、日本と中国に置き換えてみた時に、どういう戦い方になるのか、構想主導型防衛力整備を行うために、どういう戦い方をするのかということについて頭の体操を行うべきだ。
〇我が国に対する侵攻が起こった場合でも、ウクライナに学ぶべきところは沢山あるはず。装備体系にしてもストラテジック・コミュニケーションにしても、世界を味方につける経済制裁を含めた軍事以外の対抗手段を複数採って、圧力をかける、或いは民間を巻き込んで、義勇兵等の力を結集するような、必ずしも軍事力で劣る国が戦いで負けないというか、ルトワックが言うように、逆説的に大国は小国に勝てないということも実感。
(2)次年度における勉強会の方向性
〇上半期については、関心が高く、早めに頭の整理が必要と思われる台湾海峡危機への対応について勉強会を行いたい。上半期6回の中で、台湾海峡危機をどう捉えて、何が課題となって、我々としては何を考えなければならないかについて議論が必要。加えて、現在のウクライナ状況の影響も加味されるので、そこは状況を見ながら考えていきたい。
〇下半期については、3文書見直しへの打ち込みはこれで終わりでは無く、どういう形で帰結したかについて分析し、何が課題として残っているかについてはフォローする必要がある。したがって、基本的には、3文書見直しの方向性と評価を下半期のテーマにしたい。ただし、下半期はまだ流動的なので、実施しながらメンバーによる勉強会のテーマについての要望を出していくべき。
〇令和4年度は、勉強会の成果を「見える化」することにトライしたい。内容を、なるだけコンデンスして、現役の参考になることをを文章化することをイメージしている。作成回数は確定できないが、勉強会で使った資料、文献や議事録だけではない、もう少し内容を簡略化しポイントを明確にしたものを紙ベースにしたい。
〇ウクライナ情勢を見るに、安全保障だけではなく、今回、経済制裁がものすごい形で行われているので、経済、貿易、通貨体制も含めて再編されるというか、新しいデザインに変わっていくだろう。その中で、日本は結構、パワーもあるし、G7の中では米国に次ぐ勢力であり、アジアでは唯一の国であるので、ウクライナ後の世界において、日本がどのようなスタンスをとるのかは、非常にインパクトがある。
〇NATOは間違いなくNATOだけで団結すると思うし、欧州の中立を望む国家もNATOに入ることが言われているので、欧州は多分、一つの塊になると思う。こうしたことも含めたうえで、中国、北朝鮮、ロシアを日本の安全保障上、どのように捉えていくのか、大きなデザインを考えてみることが重要。