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活動の計画と結果

令和2年度下半期における活動の焦点

 イージスアショア配備中止を受け、政府として安全保障戦略を含めての見直し(大綱・中期)が予期される。そのプロセスで予期される我が国防衛政策に係る主要論点を網羅しつつ、我が国の本格的な防衛戦略の構築に資するテーマを勉強・議論すると共に、議論の成果をまとめた成果物を作成することをR02年度後半期の目標とする。
 その成果物と現実の政策等を比較することにより、如何なる課題に解決の道筋がつけられ、如何なる課題が先送りされたかを明らかにする。これによって、将来の政治日程や政策検討の緊要なタイミングにおいて時宜を失することなく優先順位と方向性を持った問題提起を政治や国民に対して行うことを通じて、軍事のプロとして政軍関係における責任を果たすための資を提供することを目指すものである。

第8回研究テーマ(9月):日本の防衛戦略

我が国における防衛戦略は2014年策定の国家安全保障戦略、31大綱/中期防により政策文書として概ね体系付けられた。それ以前は、憲法解釈に係る閣議決定や国会答弁、内閣法制局の解釈に基づく様々な防衛政策を総合的に捉えることによって防衛戦略の基本的な枠組みが理解できるのみで、捉え方も十人十色であった。
 1976年に初めて策定された「防衛計画の大綱」も元々は冷戦期におけるデタントの影響を受け拡大する一方の防衛予算に関する政治や国民の不安を解消するために常備すべき防衛力の水準を示す政府文書として策定された。その後の我が国を取り巻く安全保障環境の変化や国内政治情勢の変化等を受け大綱の性格と内容も徐々に変容してきたが、上位戦略文書の不在や防衛戦略を実行する為の法的根拠の未整備(有事法制等)並びに主として日本国内の制約による日米防衛協力の実行性を担保する仕組みの不在等により、本格的な防衛戦略を策定することは実効上困難であり、その前に解決すべき案件が多数存在した。防衛戦略の策定という「あるべき論」「理想論」を振りかざすよりも時々の機会に応じて機能する軍事組織を作り上げるためになすべきことを積み上げることが国防に携わる実務者にとって優先すべきことであったとも言える。
 ここでは、戦略に関する一般的な体系の在り方、構成、内容等に関して整理すると共に我が国において如何なる変遷を遂げてきたか(そのプロセスは状況に変化に応じてあるべき姿を追求した結果としての進展)を関連するテーマ、分野に応じて概観することを通じて、何が解消され、何が課題として取り残されているのか、如何なる方向性で解決を目指すべきかを明らかにする。
【参考文献等】
①デニス・M・ドリュー、ドナルド・M・スノー『戦略の策定』米空軍総合大学出版局、1988年8月、8-15頁、55-60頁
②小川剛義「戦略の創造を考える」『鵬友』22巻4号、1996年11月、1-12頁
③間宮茂樹「何故日本人は戦略的発想が苦手なのか」『戦略研究』第7号、2009年12月、141-155頁
④近藤重克「日本の国家安全保障戦略についての一考察」『戦略研究』第5号、2007年11月、15-22頁
⑤石津朋之「『日本流の戦争方法』試論」『戦略研究』第5号、2007年11月、35-47頁⑥高橋秀幸「国家安全保障戦略策定に不可欠な日本版NSC設立に向けて」『国際安全保障』第39巻第3号(2011年12月)
⑦樋渡由美『専守防衛克服の戦略』(株)ミネルヴァ書房、2012年7月

第9回研究テーマ(10月):日本の防衛政策の変遷

 ここでは、我が国の防衛戦略を構成したと考えられる基本的な防衛政策に如何なるものがあるのか、それらが憲法9条との関連で如何に形成されてきたか、状況の変化に応じて如何なる変遷を遂げてきたか、を明らかにする。その中でも特に「専守防衛」という防衛政策が如何なる幅を持つかを憲法9条に由来する各種防衛政策との関係で整理すると共に軍事合理性から見た場合に如何なる問題を内包するかを明らかにする。
【参考文献等】
①道下徳成「日本の防衛政策/自衛隊に関するヒストリオグラフィー」『年報 戦略研究5「日本流の戦争方法」』5号、2007年11月、203-226頁
②松岡広哲、中島信吾「「所要防衛力」から「基盤的防衛力」への転換期における政策決定に関する考察」『国際安全保障』第44巻第3号、2016年12月、1-20頁
③武田悠、「米国の国防政策と「防衛計画の大綱」」『国際安全保障』第44巻第3号、2016年12月、21-34頁
④高橋杉雄、「基盤的防衛力構想からの脱却」『国際安全保障』第44巻第3号、2016年12月、54-71頁
⑤千々和泰明「未完の「脱脅威論」-基盤的防衛力構想再考-」防衛研究所紀要第18巻第1号(2015年11月)131-148頁
⑥高橋杉雄「日本の防衛政策の現状と課題」『防衛研究所紀要』 巻 号、 年 月、頁
⑦谷内正太郎『日本の安全保障と防衛政策』(株)ウェッジ、2013年12月、3-9頁

第10回研究テーマ(11月):日本の防衛関連法制の変遷

 ここでは、防衛戦略を遂行する法的根拠が如何なる変遷を通じて整理されてきたかを法制度的な観点から整理すると共に如何なる課題が取り残されている?状況の変化に応じて顕在化しているか?を明らかにする。特に防衛戦略上重要性を増している「グレーゾーンの事態」並びに新たな領域における行動を担保する為の法制度は如何にあるべきかを考える。
【参考文献等】
①千々和泰明「序論 平和安全法制を検証する」『国際安全保障』第47巻第2号、2019年9月、1-19頁
②徳地秀士「平和安全法制の論議を振り返る」『国際安全保障』第47巻第2号、2019年9月、20-38頁
③高橋杉雄「平和安全法制とグレーゾーン‐評価と今後の課題‐」『国際安全保障』第47巻第2号、2019年9月、39-52頁
④村野将「平和安全法制後の朝鮮半島有事に備えて」『国際安全保障』第47巻第2号、2019年9月、74-93頁
⑤山本慎一「平和安全法制と国際平和協力‐国際的潮流と国内法制度の比較分析‐」『国際安全保障』第47巻第2号、2019年9月、94-113頁

第11回研究テーマ(12月):日米同盟の変遷

 我が国防衛戦略の重要な柱である日米同盟が1952年の旧日米安全保障条約の締結から1960年の安保条約改定を経て如何なる変遷を遂げてきたかを概観すると共に防衛協力の具体的な在り方を取り決めた「日米防衛協力のために指針」(「ガイドライン」)の変遷を通じて日米同盟の実行性を如何にして向上させてきたかを整理する。その上で、日米同盟の実効性を更に高めるための課題について検討する。
 また、米中を巡るパワーバランスの構造的な変化と世界の大国として台頭した中国と米国の「大国間競争」が激化する状況において米国の軍事戦略の動向を踏まえて我が国として如何なる防衛戦略を取るべきかについて検討する。
【参考文献等】
①細谷雄一「21世紀の同盟関係-日本の視座から」『国際安全保障』第44巻第1号(2016年6月)p1-9
②徳地秀士「「日米防衛協力の為の指針」からみた同盟関係-「指針」の役割の変化を通じて」『国際安全保障』第44巻第1号(2016年6月)p10-29
③武田悠「「日米防衛協力の為の指針」策定をめぐる日米交渉」(その意義と限界を中心に)『国際安全保障』第36巻第4号(20093月)p1-18
④Armitage, J.Nye, “The U.S.-Japan Alliance in 2020 – AN EQUAL ALLIANCE WITH A GLOBAL AGENDA”, CSIS, Dec.7 2020
⑤猿田佐世「第4次アーミテージ・ナイ報告分析 さらなる日米一体化への要求」https://www.nd-initiative.org/research/6411
⑥藤井健一「米国の第三のオフセット戦略-その概要と日本への影響の可能性-」『海幹校戦略研究』2018年7月(8-1)p117-140
⑦森聡「第5章 米国の「オフセット戦略」と「国防革新イニシアティブ」」p53-67
⑧用田和仁「JFSS報告」
⑨荒木淳一「米国の対中軍事戦略の動向」つばさ時評(9.2)
⑩荒木淳一「モザイク・ウォーフェアの概要」(06.12)
(⑥~⑩については米国の対中軍事戦略に関する参考資料)

第12回研究テーマ(令和3年1月):防衛戦略の柱としての「抑止」と実効的な抑止のための統合体制の在り

 下記4項目、並びに現状と将来を見通した場合の我が国防衛戦略の柱となる「抑止」の概念に基づく防衛戦略の概要を検討すると共に、その為に必要な装備体系、統合運用体制、C2体系等の在り方についても検討する。

 ①抑止理論、②我が国における「抑止」、③拡大抑止の実行性確保、④「抑止」の為の装備体系

第13回研究テーマ(令和3年2月):防衛戦略の新たな領域

新たな領域(宇宙、サイバー。電磁波)の特性と我が国の現状を踏まえ、今後如何なる取り組みを進めるべきかを検討する。また、ミサイル脅威の増大を踏まえて我が国におけるIAMDの在り方についても検討する。(IAMDに関しては次回を予定)
【参考文献等】
①土谷大洋「作戦領域の拡大と日本の対応-第4と第5の作戦領域の登場」『国際安全保障』第41巻第1号(2013年6月)、1-11頁 
②加藤朗「新たな安全保障領域「サイバー空間」の理論的分析」『国際安全保障』第41巻第1号(2013年6月)、12-25頁
③橋本靖明「サイバーセキュリティの現状と日本の対応」『国際安全保障』第41巻第1号(2013年6月)、27-43頁
④鈴木一人「宇宙空間の軍事的重要性の高まりと宇宙安全保障」『国際安全保障』第41巻第1号(2013年6月)44-59頁 
⑤福島康仁「宇宙利用の拡大と米国の安全保障-宇宙コントロールをめぐる議論と政策」『戦略研究』第9号(2011年3月)23-38頁

第14回研究テーマ(令和3年3月):年度のとりまとめ(新たな防衛戦略の在り方)

第12回研究テーマを含め、今までの勉強会の成果を踏まえて議論し取りまとめを行うと共に今後の主要研究テーマ等を絞り込み令和03年度の活動計画策定の資を得る。
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